青い梟の輪郭

感じたことを括り直すための内的な語りや対話です。

【フィンランド滞在記2】謎のカンファレンス編 ⑴

ホームステイ2日目にも色々なことがあった。
鍋の取っ手を誤ってドロドロに溶かしてしまい、すいませんと謝ったら、「よい作品だ。誇りを持て」と何故か褒められたり、ヨーヒッコというフィンランド古楽器を練習したり、子どもたちと遊びまくったり、少し遠くまでサイクリングしてパワースポットみたいなところを見つけたり。
なんだけど、3日目からホストマザーのインカに連れられて、1週間、別のコミュニティで生活することになったので、ここからはそこでの話(前半)。

 

 初日

閉所恐怖症なんだけど、トランクの隅におまけで付けたような補助席に乗せられて、エスポーで開かれるカンファレンスに向かう。異国だからとか関係なく、普通にきつい。閉所を意識するとヤバいので寝る。Are you OK? が四方から飛んでくる。


前日に突然寝袋とバックパックを渡されたので、アウトドア系なことだけは分かっていた。

しかし、現実は予想をはるかに越えていた。
魔女の宅急便なんて微塵も関係ない。あれは魔女について説明するためにホストファーザーが喩えただけだった。

カンファレンスというかなんというか。

つまるところ、エストニア人が半数を占める謎のヒッピー集団による、霊的に自分自身を高めるエコロジックでクレイジーなプログラムに同行しながら、毎日の料理当番をすることになった。

 

2日目

インカに借りた寝袋は思ったより寝心地がよくて、よく眠れた。
指定された時間にキッチンに行ってみたけど誰もいなかった。
朝はとてつもなく清々しいので芝生の上に座ってしばらくぼーっとしてた。

朝食はフルーツがメインで、スイカのカッティングを任された。
ありきたりな形で切ればいいかと、ど真ん中に包丁を入れる。
真っ二つにしようとした次の瞬間、右手の小指が事故った。
切ったわけじゃない。
けど、関節でボキボキ!と音がして激痛が走った。

右手の小指は何年も前からよく腱鞘炎になって、何もしなくても基本的に少し痛い。
フィンランドに来る前に、親知らずとか抜いてそれなりに健康状態にしたけど、小指だけはどうにもできなかった。
そんなわけで、これは本当にやっちまったと思った。
心配されつつも、スイカを切らないわけにはいかないので、気合いでなんとかした。
時間が経ってもそんなには腫れてないので、突き指だということにした。

 

3日目

シェフが到着した。
本格的にヘルパーとしての生活が始まった。
カルチャーショックを通り越すようなこんな訳のわからないコミュニティで、料理の手伝いなんてクレイジーな体験なのに、小指が使えなくて仕事が満足にできないことが歯がゆい。

 

小指は朝起きたら腫れてた。
痛みは昨日よりマシになったけど、どうなんだろう。
折れてたらやばい。
けどどうしようもない。
一応、通信料覚悟で海外旅行保険のサポートセンターに電話したけど、詳細な説明するから長くなります。通信料大丈夫ですか?と言われて、
それは嫌だなと思い、大丈夫じゃないですと電話を切った。
仕方がないので持っていたマスクとボールペン(添え木の代わり)と借りた紙テープで処置をした。
(←なんで手からペンが生えてるの?って感じでわりとウケた)
どうせ医者に行ってもこんなもんだろう。

 

エストニア人のカドリが見るに見かねたのか、謎の白い粒を取り出し、これを飲めと言った。
いかにも怪しいので、アジア人にどう効くか分からないんじゃ……と言ってみたが、ナチュラルメディシンだから大丈夫だ、ということで少しもらった。
結果的には、それを飲んだからといって特に変化はなかった。
気付け薬みたいなもんかな。
そんなんくれるなら肉が食いたい。
ヒッピー達はベジタリアンだ。

 

それはともかく、シェフのユーゾはドレッドヘアのフィンランド人で、くそかっこいい。
主に、野菜や果物のカッティングと皿洗いと片付けを任された。
ユーゾはやさしくて穏やかな感じの人で、あれこれ料理のことを教えてくれる。
さらにピアノとかギター(仰向けにしてピアノみたいに弾くスタイルのやつ)とかディズィリドゥをやってるとかで、音楽の話で盛り上がった。
あとファイナルファンタジー7の話でも盛り上がった。
彼はプログラムに参加しない(というか、朝昼晩と22人分の食事を作ってその度に後片付けしなきゃなのでそんな暇ない)ので、ある意味一番近い仲間だ。

 

夕食の片付けが済んだあと、おもむろにディズィリドゥを弾き出したので、バイオリンで絡んでみた。
即興からアイリッシュまであれこれ試しつつセッションした。
とてもクールだった。

 

こっちに来てから思うのは楽器や音楽が非常に身近な存在であるということ。
ユーゾとのセッションとは別に、休憩時間に1人で庭のど真ん中でバイオリンを弾いてみたりしたんだけど、皆それを特別なものとしてでなく、とても身近なものとして、リズムに合わせて身体を揺らしてくれたり、いいねとか美しいねとか言ってくれる。

 

バイオリンを持ってきたのは正解だった。

音楽は言葉を超越する。

言葉が通じてるんだか通じていないんだかよくわからない謎のヒッピー集団の中で過ごしてみて、
初めてそのことを身をもって知ることができた。

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